週刊心房細動

その病院でオペを受けて大丈夫ですか?

クライオバルーンで治療なんて絶対したくないけど、ちゃんとした病院ならぜひ治療をおすすめしたい理由。

Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル | メドトロニック

クライオバルーンで治療なんて絶対したくないけど、ちゃんとした病院ならぜひ治療をおすすめしたい理由を先に述べるとこうだ。

結論:クライオバルーンの名医になら任せても良い

 

それは誰だって名医に治療をしてもらいたい。

この記事では、クライオバルーンのメリットとデメリットをなるべくわかりやすく解説したい。世の中の病院ホームページの説明を読んでみると、これまた難解な文章で、まったく理解させる気持ちを感じられない。

患者として知りたいのは結局、「で、結局手術は成功するの?」「痛くないの?」くらいなのである。

 

 

1.クライオバルーンとは?

心臓の組織を-50℃前後まで冷却して、心房細動の原因となる肺静脈を隔離する治療のことである。熱で焼くカテーテルアブレーションのように、足の鼠径部から管を持っていくことには変わりはないが、こちらは熱で焼くのではなく、「冷却して心筋を凍結して壊死させる」違いがある。そして、最大の特長は「誰でも簡単に心房細動を治療できる」点にある。

焼くのではなく冷やす

足の傷口は変わらない

2.クライオバルーンで手術をするメリット

私が考えるクライオバルーンのメリットは以下の3つである。

誰でも簡単にできるため、「医者のレベルに関係なく治療ができる=成功率に大きな差は生まれにくい」

下の画像を見ていただきたい。心臓の左房を後ろから見た立体図であるが、熱で焼くカテーテルアブレーションでは赤い点の場所を1箇所ずつ例えば30秒焼きながら、その位置がずれないように肺静脈を隔離する必要がある。

一方で最初の画像にあるようにクライオバルーンでは、バルーンを一気に−50℃に到達させることであっという間に隔離ができてしまうのである。

不整脈 | 香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科学(香川大学病院第二内科・循環器内科・腎臓内科・抗加齢血管内科)

手術時間は1時間ほどと、かなり早い

早い。たしかに早い。60〜90分で終わってしまうケースが多い。心臓には肺静脈が4本あることが普通なのだが、それぞれにスポッとバルーンをはめこんで、だいたい3分程度冷却する。

それを4回繰り返すだけなのだ。

成功率も高い

成功率も高い。熱で焼くカテーテルアブレーションと同じ成功率と捉えてもらって全く問題ない。これに関しては世界的に同様のエビデンス(証明)があるし、基本的にはすべてのドクターも知っている事実である(成功率に関して難癖をつける医者は、たかが数%の差についてどっちが良い悪いを議論しているにすぎない)。

 

ではこれだけ早い、簡単、失敗しないと三拍子揃ったクライオバルーンであるが、世間のドクターが本音で語るデメリットを紹介しよう。

3.医者が本音で語る、クライオバルーンのデメリットとは

成功率は高い。しかし再発する可能性が高そう・・・

これに関しては非常に専門的な話ではあるのだが、心房細動の初期の段階である発作性心房細動のレベルであれば、手術をしてもその後何年も再発する可能性は低いと考えられている。

しかしながら、心房細動になって半年〜1年のレベルになってくると、心房細動の原因が肺静脈以外にも進行してしまい、もはやバルーンでは治療できないのである。

その意味で、一時的には心房細動は治るのであるが、肺静脈以外の場所を原因として再発する可能性は十分に考えられる。

熱のアブレーションだって手術時間は早い!

こう豪語する医者は結構多い。

「俺ならクライオと同じくらいの時間で治療できる!」

という意見を結構耳にしてきた。

クライオバルーンのデメリットというと少しニュアンスは異なるが、手術時間の早さはクライオバルーンだけの専売特許ではないのが事実だ。

ここで注意したいのは、日本でアブレーション治療ができる医者は数多く存在するが、クライオバルーンと同等の早さで手術ができるドクターは数少ないのである(医者の腕よりも、看護師や臨床工学技士の力量も問われる)。

すべての患者でクライオバルーンが使えるわけではない 

これは最大のデメリットかもしれない。

アブレーション治療をする前に、必ずと言っていいほどCTを撮影するのであるが、その時に自分の左房と肺静脈の形やサイズを見てみないことには、クライオバルーンの治療ができるかどうかはわからないのだ。

なので、ドクターに「クライオバルーンでお願いします!」と言っても、患者側の問題でNGなケースが多々存在する。

 4.それでも私がクライオバルーンを勧めたい理由

日本のトップレベルの医者の見解を含め、総合的にクライオバルーンか、熱のカテーテルアブレーションかどちらがいいか考えてみた。

私の結論はこうだ。

クライオバルーンの名医になら任せても良い。

やはり再発することはなんとかして避けたいものである。症状が出ればそれだけ苦しむし、日常生活に支障が出る。手術になれば仕事も休まなくてはならない。合併症も怖い。

短時間で、あまり苦しまずに確実に終わるのであれば、ぜひおすすめしたい。

特に自分の親が高齢で心房細動になったときには、ぜひ検討したいものである。

そして日本のトップレベルの病院では、競ってクライオバルーンで治療成績を向上させるテクニックを考案している。

そのため、日本のとある病院では簡便なクライオバルーンであっても、手術後何年も再発しないような技術を持っているため、ぜひそういった病院で手術を受けたい。

さらに、実は熱のカテーテルアブレーションには大きなデメリットが存在する。

それは、下手なドクターが治療すると、術後に別の不整脈が発生しやすい点にあるのだが、これに関してはまたじっくりお伝えしたい。