週刊心房細動

その病院でオペを受けて大丈夫ですか?

【患者は誰も知らない】アブレーション手術の成功は医者の腕だけでは決まらないという話

外科の手術と違って、循環器分野である不整脈のような手術においては、医者の腕だけで手術の成功が決まることばかりではない事実を知っていただきたい。

 

1.アブレーション手術が成功する要因

私が考えるその要素としては、

・医者の腕(テクニック)
・医者の判断力(この程度でやめたほうがいいのか、はたまたもっと治療したほうがいいのかの判断など)
・臨床工学技士のサポート力
・看護師のサポート力
・そして3D mappping機械の性能、である。

 

特に「心房頻拍」(心房細動ではなく、突然一定のリズムで脈が早くなる不整脈。PSVTはのぞく。)においては、実はアブレーション手術の成功の要素として、医者のテクニックとこの3D mappingの性能が大きなウエイトを占めているということは、きっと話題になることはないはず。

2.どのような患者が心房頻拍が起こりやすいか

私がこれまで見てきた中で、この心房頻拍という不整脈が起こりやすい患者としては傾向がはっきりと決まっていると考える。

それはこの2つだけ。

心臓オペを受けたことがある人

アブレーション手術を受けたことがある人

 

心臓のオペを受けたことがある人は、その後不整脈が起こりやすい

心臓のオペと言っても実はいろいろと種類があり、特に問題なのが、心臓を切る必要がある手術である。それは弁形成や弁置換、それに伴う外科的なアブレーションや肺静脈隔離である。

こちらのイラストは、見慣れないと非常にわかりづらいのだが左心房を切り開いて中の様子がわかるように露出させ、メイズ手術をするイメージ図である。

https://www.hiratsuka-city-hospital.jp/kekkangeka/shindan/treatment05/

何が言いたいかというと、心臓のオペにおいては心臓を切ったり貼ったりしてダメージを与えることで、心臓の組織が傷み、その部分を原因として不整脈が発生しやすいのである。

心臓外科で僧帽弁形成術をした、大動脈弁置換をした、メイズ手術をした、ASD手術をしたという人は、非常に注意したほうが良い。このような手術後に起こる心房頻拍などの不整脈は、その原因の特定が非常に難しいことも少なくない。つまりは手術の失敗や、すぐの再発につながるのである。

3.3D mappingの機械をどれだけ備えているか

不整脈カテーテルアブレーションで治療する時に、どのような医療機器を使用して治療するのか説明を受けていない人もいるかも知れない。

「熱で心臓の悪いところを焼いていくんですよ」

と言われて、果たしてどうやって不整脈の原因を探すのだろうと疑問に思うかも知れない。

 

その方法とは、「3D mappingシステム」なる数千万円もする医療機器を使用して、不整脈の原因を探していくのである。

日本で最も使用されている3D mappingシステム"CARTO"

発作性上室性頻拍の種類と治療法を医師がわかりやすく解説 | 不整脈といえば「東京ハートリズムクリニック」

上記の画像の見方の解説はここではやらないが、心臓の電気信号を画像にして捉えることができ、心臓内のどこを焼いたら良いのかがわかる仕組みになっている。

初めてこのような医療機器を目の当たりしたときには衝撃を覚えたが、いまや日本国内には大きく3種類の特長のことなる3D mappingシステムが導入されている。

もちろんそれぞれが非常に高額なため、病院も1つの宣伝としてホームページに自分たちが持っている3D mappingシステムの紹介をしているところも多い。

例:関西ろうさい病院(兵庫県

www.kansaih.johas.go.jp

 

例:藤田医科大学病院(愛知県)

www.junkanki.fujita-hu.jp

4.あなたが手術を受ける病院にはどのような3D mappingシステムが導入されているか

国内で使用できる3D mappingシステムは、実はそれぞれどのような不整脈に強いのか違いが存在するため、言ってしまえばその3種類を備えている病院ほど様々な不整脈治療に対して最適な治療方法を検討することができるのである。

心房細動には◯◯

心室不整脈には◯◯

難治性不整脈には◯◯

と言ったように使い分けている病院がほとんどである。

 

これは私自身の意見ではあるが、1種類の3D mappingシステムしか導入されていない病院は、難しい不整脈に対する理解が不足しているように感じる。様々な医療機器を駆使して、難しい不整脈を解明している病院ほど経験値も高く、あなたの不整脈治療の成功率を高めてくれるかも知れない。