週刊心房細動

その病院でオペを受けて大丈夫ですか?

町医者は心房細動のことについてよくわかっていない

皆さんは、かかりつけ医がどれくらい信頼に足るとお考えだろうか。

たくさんの医者と関わる仕事をしていると、隣近所の人が教えてくれる

「あの先生は面倒見が良いからおすすめよ」

「あそこの先生は有名みたいよ」

「○○さんも、あのクリニックはいいねって言ってたよ」

という情報は全く信じるに値しない。

特に医療系の分野においては、診察を受ける、処方を受ける、手術を受けるといったあらゆる点において、患者側と病院側に非常に大きな情報の乖離が見られる。食べログのように、「あそこの病院、雰囲気も良くてちゃんと病気も治るしいいよね!」とは絶対にならないのである。

そして誰しも経験があると思うが、「医者はああ言ったけど、本当に病気は治るのだろうか」、「一向に症状が良くならないけど、このまま通院していて良いのだろうか」とふと考える瞬間があり、それは医療のような高度に専門的な世界では、自分の判断が正しいかどうかを確認する手段が全く無いのである。

そう考えるからこそ、専門的な知識を持つ人が周りにいれば、むしろその人の判断を仰いだほうが良いことだってある。

1.心電図検査でも不整脈と診断されない?

このブログのテーマでもある、心房細動のような不整脈も同様である。

もし今まさに動悸を感じているのであれば、一般的なケースではまずは馴染みの内科クリニックに行って、「最近動悸がするのですが大丈夫でしょうか?」というシーンから始まるのかも知れない。

 

クリニックの診察で行なわれることの1つに、心電図検査がある。

もちろん自分の手首に指をあてて、動悸がするときだけ「あれ、なんか心臓の拍動がおかしいな?」と調べることもできる。

心電図検査では、さらに詳しくどのような不整脈かどうかを調べることができる。

通常だと上半身や手首足首に検査用のシールを貼って、およそ1〜2分ほどベッドで寝ている時に検査を行なうが、この時に、運良く不整脈が起きればその状況が心電図としてデータに残るし、起きなければ”様子見”となってそのまま帰宅することだってある。

細かい話であるが実際の手術の現場でも、いざ手術台の上に寝てみると、「(これから手術を受けるんだ・・・)」という緊張からか、肝心の不整脈がまったく現れないことも少なくない(この場合、稀ではあるが手術せずに終了、というケースも存在する)。

同様に、クリニックのベッドに横になってみると、その静かでリラックスした状況のせいか、不整脈が起きないこともあったりする。また、1〜2分のような短い時間だと、なかなかその時間に不整脈が記録されることも多くなく、会社の健康診断レベルだと「問題無し」で終わることが多い。

かくいう私も動悸が頻繁に起こることがあり、不整脈専門の総合病院で心電図検査をしてもらったが、5分くらい計測して1度しか記録されなかった。

 

2.不整脈と診断!紹介先の病院で手術を受けても良いかどうか

もちろん上記のようなケースであれば、すぐそのまま治療、というのも大げさなのかもしれない。

けれどもそれが治療に値するかどうかは、もっと大きな病院で検査をしてみないとわからないとのことで、提携先の総合病院や大学病院を紹介されることになる。

ここで問題になるのが、冒頭でも書いたように「診察を受ける、処方を受ける、手術を受けるといったあらゆる点において、患者側と病院側に非常に大きな情報の乖離が見られる」ため、果たしてその病院が”オススメ”なのかどうかが全くわからないのである。

当然医者からも「こことあそことむこうの病院だったらどこにしますか?」などと聞かれることはないわけで、やはり選択の余地はない。

 

ではなぜその病院を指定されたのかというと、実は「そこの先生がどうやら有名だから」とか「積極的に紹介してくれと営業してくるから」という理由が多いのが事実である。当然、紹介してアブレーション治療をしてもすぐに再発したり、患者からクレームが多いようではもうその病院に紹介するのはやめようということになるが。

加えて、クリニックの医者が心房細動治療に詳しいかと言えば全くそんなことはないのである。心電図を見て「心房細動だな」というのはわかるが(この程度であれば医者でなくても誰でもわかる)、クライオバルーン治療と熱のアブレーション治療がありますが、説明を受けた上でどちらでやりたいですか?という、肝心な治療の話はできないのである。

そのため、身も蓋もないことを言えば、あなたのアブレーション治療がうまくいくかそうでないかは、もはや運に任せるしかないのである。