本当は怖いカテーテルアブレーション
「手術」と言われると、なんだか切ったり貼ったりと血液がダダ漏れして大変!というようなイメージを抱くかもしれない。
1.カテーテルアブレーションは「手術」ではない
ここでいう手術とは、「カテーテルアブレーション」のことであり、ざっくり説明すると、数ミリ程度の細い管を数本足に刺して、極めて安全に心臓へ管を持っていき治療することである。そのため、ドクターXのような外科手術に比べれば遥かに安全&傷が残りにくいという、メリットも非常に大きい(たった10年?15年?前に比べれば、いまやほぼ根治する治療方法といっても過言でない)。試しにgoogleで「カテーテルアブレーション 傷」と検索してみると、アブレーション体験者の術後の傷跡やきれいになっていく様子がわかる。
2.カテーテルアブレーションのリスク
しかしながらリスクが完全にないのかと言われると、そうとも言えなく、こちらのサイトにも簡単に説明がのっている。
・脳卒中
・肺静脈狭窄
・横隔神経麻痺
・鼠径部の血管損傷
・カテーテル穿刺に起因する刺激感
・感染症
・出血
・心嚢液貯留
・左房-食道瘻
たくさん書いてあるが、たしかにこの通りどれも起こりうる合併症であり、ほぼすべてを見た経験がある。
これまで2,000例以上のカテーテルアブレーションを立ち会いしてきた経験から、あえてその頻度を並び替えるとこうなる。
1.横隔神経麻痺
2.肺静脈狭窄
3.心タンポナーデ
けれどもこのランキングにはほとんど意味はなく、なぜなら合併症がおこる確率は1%前後と極少数であるからだ。ついでにそれぞれがどのような合併症なのか解説すると、下記のようなイメージをもってもらいたい。
1.横隔神経麻痺:呼吸をするための筋肉が弱り、呼吸不全になり息切れする
2.肺静脈狭窄:肺の血流が低下し呼吸困難に
3.心タンポナーデ:心臓の外側の袋に血液がたまり、心臓の動きを抑制し、血圧低下、最悪ショック死も
「死に直結する合併症」といえば、心タンポナーデか左房食道瘻くらいか。
3.本当は怖いカテーテルアブレーション
本当に怖いのは、実は合併症ではなかったりする。
実際アブレーション後に、患者やその家族にどのように説明されているかはわからないが(医療現場のスタッフは当然リアルな説明を聞いている)、本当に怖いのは手術中にどのような危険な場面があったかがうやむやにされ、「これはよくあることなんだよ」と納得のいかない説明をされリスクを負ったまま退院してしまうことにあると思う。
「こんなやり方だときっと再発するだろうなぁ・・・」
と、某都内大学病院のドクターのアブレーションを見ていて感じたことだ。
余談ではあるが、大学病院=手術がうまいという迷信は完全に捨ててほしい。
医療の現場にいると、どの病院が良いのか?どの医者がうまいのか?という情報の非対称性が生じていることを強く痛感し、「もっとも知りたいこと(=安全に手術は成功するのか)をもっとも知れない(=患者にはドクターの力量なんてわかるはずがない)」という世界であることに問題を感じている。
✗ 手術件数が多い病院=良い病院
✗ 『いい病院』という雑誌に載っているから良い病院
✗ 大学病院だから良い病院
どれも間違っているのが医療の世界である。
「その病院でアブレーションを受けて大丈夫ですか?」